高齢者にとって資産管理はつねに気になる課題です。「How to Retire お金を使いきる、リタイア生活のすすめ」(岡本由香子 訳、KADOKAWA)を読んでみました。
著者 クリスティン・ベンツ Christine Benz 氏は、米国投資調査会社モーニングスター社の資産管理・リタイア計画担当ディレクター。コラムニストでもあり、彼女の発言は多くのメディアで取り上げられ、2021年には「資産管理で最も影響力のある女性10人」にも選出されています。本書は著者が選んだ、18人のリタイア計画専門家とのインタビュー、レッスン1〜18からなり、18の対話でリタイア後の健康、暮らし、住まい、資産運用、介護等々の理解を深めることを通して、読者が自分らしいリタイア生活を築けることを目指しています。米国での事情とはいえ、私たち日本人にとってもたいへん有意義な内容になっています。
本書の帯には「リタイアの5年前から、自分の老後をイメージしよう」とあります。リタイアする5年前という時期、おそらくまさに社会でバリバリと活躍中の時期と思いますから、見様によっては先のことを考える余裕などない、あるいはリタイアなどはるか先と考えておられる方が多いと思いますが、ぜひ時間を見つけて手にとっていただきたい一冊です。そういう私はリタイア2年生ですので、リタイアの5年前には本書はまだ発刊されていませんでした。たいへん残念ですが、リタイアして遅れて出会えるのも愉しいものです。
基本のコンセプトは副題にもなっている、お金を使いきる、リタイア生活のすすめ。これを踏まえて、さまざまなエキスパートとの対話が繰り広げられます。今回は、「レッスン7 自分にとって意味あることにお金を使う」について。この章では、100万部突破した世界的ベストセラー「トゥー・ビー・リッチ 経済的な不安がなくなる賢いお金の増やし方」(岩本正明 訳、ダイヤモンド社)の著者ラミット・セティ Ramit Sethi 氏とのインタビューの内容が14ページにわたって記載されています。彼の中心的テーマはマインドフル・スペンディング、自分に喜びをもたらすものにお金を使おうということ。リタイアと同時に襲ってくる最大の心理的課題はそれまでずっと蓄財に傾けていた心をどう取り崩しに向かわせるか。人生の中でいちばん自分にお金を使えるのは40〜60歳の時期といわれているけれども、リタイア後でもまだ手遅れではない、いつだって今日が最良の日だ、倹約する必要はないと自分に言い聞かせて、無理せず自分らしくあるためにお金を使おうと諭してくれます。
本書は全章を通じて、著者クリスティンの持つ深くて広い視野によって、さまざまな条件の人々を網羅するよう配慮してまとめられています。リタイアの5年前からリタイアして5〜10年の方にとって大切なことを気付かせてくれることと思います。
