2017年ごろの「定年後」事情

父の23回忌を来年に控えて、ふと、父の退職後を思い出してみましたが、当時同居していなかったので詳細を知らない自分に気づきました。調べてみると、会社員として定年の55歳を迎え、その後子会社に出向して60歳まで働き、60歳から老齢厚生年金、65歳からは老齢基礎年金も支給されていたようです。この世代は払った保険料に対して受け取り総額が大きく上回るケースが多かった世代。両親は定年後、旅行によく出かけていました。足腰が弱くなって、いよいよ動きがとれなくなると茶の間でテレビを付けてくつろぐ時間が増えました。それでも、夏になると避暑を兼ねて遊びに来てくれたので、それなりに老後を愉しんでいたように思います。この年代のサラリーマンは誰もが仕事一筋だったと思います。退職後は外出を好まなかったので、母がいたことが一番の幸せだったことはいうまでもありません。

2017年にベストセラーとなった『定年後 50歳からの生き方、終わり方』(楠木 新、中公新書)は、団塊の世代といわれる諸先輩方の定年後の生活や心境を知るうえでたいへん参考になります。対象とされているのが「60歳定年後の空白・再雇用問題」をまさに当事者として経験された世代で、報酬比例部分だけでは生活に不十分なため、再雇用で働きながら65歳を待つというパターンが多い中、自分にとって大事なものや自分の役割に気づいていきいきと生活されているケースも紹介されています。生活の経済的基盤をみると、その後の我々の世代の年金はますます厳しい状況になるわけですが、その一方で我々の世代は2017年当時と比べると、自分でなんとかしなければいけないという危機感が強いのか、資産形成などの利用できるサービスがいろいろと改善されているように感じました。

本書が出版された2017年といえば、NISA(2014年1月の制度開始)、ジュニアNISA(未成年者少額投資非課税制度、2016年4月)がありましたが、生活費の足しになるとは考えにくく、本書ではほとんど触れられていません。その後、つみたてNISA(2018年1月)がスタートし、同じ年の10月にはインデックスファンド「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」(オルカン)が商品化されましたが、これらの恩恵を得るまでにはいくつかのハードルを越えなければならなかったようです。

オルカンの資産規模が爆発的に拡大した背景には、「インフレ到来による日本人のマインドの変化」と「新NISAという制度の誕生」が関係していました。物価上昇により「現金のままでは価値が下がる」という危機感がクローズアップされ、このマインドの変化により、資産の避難先・形成先としてオルカンやS&P500が選ばれるようになりました。そして、2024年の「新NISA」の開始が最大の起爆剤となりました。「貯蓄から投資へ」の流れの中で、低コストで世界全体に分散投資できるオルカンが最適解として認知されたことは、約10年前とは大きく異なります。

さらに、コロナショック以前は情報や娯楽の源はオールドメディアが主流だったので、退職後の生活はこの世代よりも上の方々の生活様式とさほど変わらず、暇があればテレビの前でくつろぐことが多かったように思われます。新型コロナウイルスの流行により余儀なくされた、オンラインでの会議・授業をはじめとする新しい生活様式、これに伴って飛躍的に進歩したネット環境、AmazonのPrime Video、Netflixなどの動画配信、YouTube動画、Instagramなどでのコミュニケーションは娯楽の範囲を大幅に広げ、退職後の生活パターンもかなり変化してきました。一方、10年前には認知症への恐れや宗教観についてはあまり話題にされていなかったので、各ジェネレーションで特徴があることがわかります。

まとめ

9年前の定年後の事情と比べると、現在の生活は隔世の感があります。これから訪れる Society 5.0 では、IoT(モノのインターネット)を通じてすべての人とモノがつながり、その結果生まれる膨大なデータ(ビッグデータ)を AI が分析して、ロボットや自動運転車などが私たちを助けてくれます。今後、AI がさまざまな領域に革命を起こしていくと予想され、社会の常識や習慣が大幅に変わっていくと思うと、不安を感じる部分もありますが、その一方で、どのような社会になっていくのか、大きな期待と楽しみも覚えています。時代の流れに遅れないよう、愉しんでいきたいと思っています。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次