定年退職後どのように過ごすか、落ち着いて考えることもできず、慌ただしいまま年金生活に突入しました。まず心配になったのが今後の年金を含めた資産状況と健康という課題。しかし、準備を進めて調子づいてきたとたん、無理が祟って膝を傷めてしまいました。半年の病院通いを経てようやく1日5 km ほどの散歩を愉しめるようになり、最近は気候もいいこともなって気分は上々といったところです。自分の身体能力、過信してはいけませんね。
そんな中、書籍『彼はそれを「賢者の投資術」と言った』(水瀬ケンイチ、Gakken)の中で議論されていた、マズローの欲求階層説からみた資産形成の真の目的が頭に残って気になっていました。そこで、このマズローの説にもとづいて高齢者の生活を考えてみることにしました。
マズローの欲求階層説、今は高校でも習うようですが、私たちの世代では大学で習ったわけでもなく、なにかの本で読んだのだろうと思います。早速 AI で検索してみました。
1.マズローの欲求階層説
マズローの欲求階層説は、アメリカの心理学者アブラハム・マズロー(1908〜1970)が1943年に提唱した、人間の動機づけに関する理論。彼は人間の心の中にある「あれがしたい」「こうなりたい」という動機(モチベーション)を5つの階層に分類したうえで、人間はピラミッドの下の階層の欲求が満たされると、自然と一つ上の階層の欲求を追い求めるようになると考えました。この5つの欲求は、その性質によって大きく「欠乏欲求」と「成長欲求」の2つに分けられます。

1)欠乏欲求(ピラミッドの1〜4段階目)
下位の4つの欲求は、自分に「足りないもの(欠乏)」を埋めようとする欲求。これらは「満たされると、それを求める動機が下がる(消える)」という強い特徴を持っている。
- 第1層 生理的欲求(生きていくための欲求): 食べる、眠る、トイレに行くなど、生命を維持するための最も根本的な欲求。たとえば、お腹が満たされれば、食欲(動機)は一時的になくなります。
- 第2層 安全の欲求(安心・安全への欲求): 危険のない環境で暮らしたい、病気や事故から身を守りたいという欲求。安全な家にいれば、ビクビクして身を守ろうとする必死さはなくなります。
- 第3層 社会的欲求(所属と愛の欲求): どこかのグループ(学校、家族、部活など)に所属したい、孤独を避けたいという欲求。気の合う仲間ができると、寂しさは和らぎます。
- 第4層 承認の欲求(認められたい欲求): 他人から尊敬されたい、自分に自信を持ちたいという欲求。実力を認められて自信がつくと、他人からの目を過剰に気にする焦りは落ち着きます。
2)成長欲求(ピラミッドの最上階)
- 第5層 自己実現の欲求(人として成長する欲求): 「自分の持つ可能性を最大限に発揮し、自分らしく生きたい」という欲求。
最上位にある5つ目の欲求は、他の4つとは全く異なる性質を持っている。この欲求は「満たされるほど、さらに動機が高まる」という特徴があります。たとえば、絵を描くのが好きな人が、満足のいく作品を描けたとします(充足)。すると「満足したからもう終わり」ではなく、「次はもっとすごい絵を描きたい!」と、さらに情熱(動機)が燃え上がります。
現代社会では物質的な豊かさが増した一方で、第3層・第4層——つながりと承認——の欲求が満たされず苦しむ人が増えています。この理論は、教育・経営・医療・福祉など多くの分野で活用されており、「人が何を求めているか」を理解するための普遍的な地図として、今もその価値を失っていません。
2.高齢者目線でマズローの説を考える
高齢者としての自分の生活をマズローの説で考えてみました。
第1層:生理的欲求 「土台を丁寧に守る」
年金収入は限られていても、食・睡眠・身体のケアを最優先にする。節約意識も大切だが、食事の質を極端に落とすと健康を損ない、結果的に医療費増大につながる。また、睡眠の乱れは高齢期に起こりやすく、心身の不調の根本原因になるから注意。睡眠環境を整えよう。
第2層:安全の欲求 「不安と上手に付き合う」
老後の経済不安・健康不安は、この層の欲求が揺らいでいるから。不安を完全に消すことはできないが、「見える化」することで不安は和らぐ。
- 月々の収支を簡単に書き出してみる
- かかりつけ医を持ち、定期的に相談する
- 自治体の福祉サービスや相談窓口を把握しておく
「知らないこと」が不安を最も大きくする。情報を持つことが安心の基盤となる。
第3層:社会的欲求 「つながりは意識して作る」
退職・配偶者との死別・子どもの独立などを経た高齢期は、つながりが自然に減っていく時期。しかしマズローが示すように、人間はつながりなしには生きられない。地域の集まり、趣味のサークル、ボランティア、通いの場・・・週に一度、誰かと言葉を交わす機会を意識的に作るように心がける。電話・手紙・近所への声かけで十分。
第4層:承認欲求 「経験と知恵は、立派な貢献」
長年の経験・知恵・人生の物語は若い世代には持ちえない価値だから、「もう社会の役に立てない」と考えるのはまちがい。
- 孫や地域の子どもに昔の話を聞かせる
- 地域活動で「できること」を一つ担う
- 習い事や趣味で他者に喜ばれる瞬間を作る
承認は「働いてお金を稼ぐ」形だけではない。存在が誰かの支えになること、そう考えよう。
第5層:自己実現の欲求 「今が、最も自由な時間」
自己実現は「なりたい自分になる」こと。この欲求を追求できる条件は、高齢期になって初めて整うともいえる。仕事・子育て・社会的役割から解放され、「ずっとやってみたかったこと」に向き合える時期。成果や他人の評価よりもプロセスを楽しむことが大事。
最も大切なことは、人間は何歳になっても欲求を持ち、成長できる存在だということ。
「終わりなき成長」を楽しむ: 「自己実現の欲求」は、「満たされるほど、さらに情熱が高まる」。成果が出るとさらに楽しくなり、もっと知りたくなる。このサイクルに入ると、年齢に関係なく心はいつまでも若々しく、生き生きとしたエネルギーで満たされます。
純粋な好奇心の追求: 誰に強制されるでもなく、お金のためでもなく、ただ「自分が好きだから」「面白いから」という理由だけで没頭できるテーマ(学び直し、創作活動、研究、趣味の深掘りなど)を見つけよう。
まとめ
高齢期のマズロー実践のコツは、「土台(健康・お金・環境)をしっかり守りつつ、最上階(自己実現・好きなこと)に思い切って時間を投資する」こと。真ん中の階層の「繋がり(社会的欲求)」や「プライド(承認欲求)」は「自分が心地よいと思える分だけ、上質に保てばよい」。
